プラスチックなしの正月飾り:そのまま神様へ返せる「循環する祈り」
12月になると店頭に華やかな正月飾りが並びます。
今年はどれにしようかな、と選ぶのはとても楽しいですね。
でも、お正月が明けて飾りを片付ける時、みなさんはどうしていますか?
地域の「どんと祭」に持っていきますか?
それとも、紙に包んで可燃ごみに出しますか?
可燃ごみにする場合、針金でがんじがらめになったり、プラスチックとボンドが固まっていたりして、分別が大変ではありませんか?
力任せに縁起物の飾りを解体するのは、少し悲しい気持ちになることもあるでしょう。
また、「どんと祭」でプラスチックが燃える火を見ながら、その火でお子さんたちがお団子を焼いている光景に、少し疑問を感じたことはありませんか?
さらに、自治会の皆さんも、お正月早々、大量の正月飾りを分別・解体するのに苦労されているかもしれません。
この記事では「神様に返せるもの」という視点で、正月飾りのあり方について改めて考えてみたいと思います。
正月飾りの本来の意味とは?感謝と願いを込めて
正月飾りは、「この場所は神様をお迎えする準備ができております」という印です。
家中を清らかに掃除し、神様からの恵みの収穫物でおもてなしの用意も整いました、という意味が込められています。
門の所に門松を立てて、年神様に家をアピールします。門松は、年神様が宿る依代(よりしろ)とされ、神様が訪れる目印として重要です。
門松を目印に訪れた年神様は、正月飾りのある所を通って家の中にいらっしゃり、最終的に鏡餅のある場所に宿ります。
この鏡餅は、年神様をお迎えし、その恩恵をいただく象徴的なお供え物です。
玄関などに飾られる正月飾りは、「ここは清浄な場で、年神様を敬って準備ができていますから、どうぞここをお通りになって中へお入りください」というメッセージを神様に送るものです。
つまり、正月飾りは「非日常の結界」を示し、「敬いと感謝」を表現するものなのです。
正月飾りには最低限、次の3つがあれば大丈夫です:
縄:神聖な空間を区切る結界を表します。神様が訪れる場所を清め、歓迎する印です。
稲穂:実りの象徴であり、神様からの恵みを表します。
紙垂(しで):清浄さを表します。また、昔お米を豊かに実らせると信じられていた清らかで大いなる神の力、つまり稲妻を表わすとも言われます。
これらの材料は素朴ですが力にあふれ、神様から直接いただいたもので、直接おかえしできる物ばかりです。
正月飾りは、私たちが一年の恵みに心から感謝し、「稲が実る豊作の風景」や「家の安全と繁栄」を願いながら、今手元にそろう自然の材料で精一杯表現したものと言えます。
扇、海老、橙などは、その上で「願い」を込めるための飾りです。
紅白の飾り物、梅の枝、緑の松、赤い実などはあればめでたさが際立ちますが、絶対不可欠なものではありません。
伝統が変わりつつある現代の正月飾り事情
現代の正月飾りは、人びとが直接農業にたずさわらずに糧を得ているために、その本来の意味が見失われがちです。
飾りは購入するのが普通で、買うならばリーズナブルで視覚的に気に入ったものを選ぶのは当然です。
売る側も、より華やかに目を引く商品を大量に用意します。するとどうしても、その華やかな部分には大量のプラスチックを使うことになります。それらをつけるのは手で縫ったり結んでいては時間がかかるので、針金やボンドでくっつけます。
こうしてできあがった華やかな飾りを、消費者はクリスマスリースの正月版のような感覚で、ドアを飾るものとして購入することがないでしょうか。
クリスマスリースにも魔除けの意味がありますが、キリスト教の背景を持つリースと、神道に基づく正月飾りでは祈りの対象や意図に大きな違いがあります。
正月飾りは、年神様を迎えるための日本独自の信仰に基づいたものなのです。
正月飾りに託される祈りは、「神様、今年私たちは確かに恵みを得ました」という感謝の念と、「そして神様、心から感謝してお返しします(そして再びの恵みを願います)」という二重の意味を持っています。
この祈りは、自然の恵みを受け取り、それをまた自然へと返す「循環」の中で成立します。
そのため、正月飾りの縄は、自然の恵みである稲わらで結い、正月の役目を終えた後、どんと祭で火に返します。これは、感謝とともに神様への祈りを再び天に返し、自然の循環を続けるための大切な儀式です。
しかし、現在では針金やボンドが使われ、プラスチックの飾りがついたままのものも少なくありません。
それらを燃やすと黒い煙が出たり有害な成分が放出され、本来の清浄な祈りが損なわれてしまいます。
その結果、私たちの祈りが神様のもとにまっすぐ届かなくなる恐れがあります。
現代の正月飾りでは、私たちと神様をつなぐ大切な橋渡しの役割が果たされず、古代から続く「自然への感謝と祈りの循環」を失いつつあるかもしれません。
昨今は、いかに自然素材でできた飾りであっても、環境問題から火にくべて還元できないことが増えました。
CO2排出への懸念や、煙による近隣住民への影響から、どんと祭自体が取りやめになったという話もよく耳にします。
都市部では、野焼きに対する規制が厳しくなり、環境保護の観点からも野焼きを避ける動きが広がっています。
このような時代だからこそ、かりに土の上に放置しても、いつでも自然に還っていける自然素材を見直す必要があるのではないでしょうか。
紙垂と稲穂だけで完成!ミニマルな正月飾り
記事の後半では、自然素材の正月飾りを、ブログ管理人が手作りで作ってみましたのでご紹介いたします。
初心者なりに工夫して作ったものですので、ぜひ皆さんもこれを参考にして、さらに美しくアレンジしてみてください。
町内会では、縄をなう経験のある方がいらっしゃるかもしれません。その方を中心に子どもたちと一緒に飾りを作り、町内に配るのはいかがでしょうか?
子どもたちは、大人よりも環境問題に敏感で前向きなことが多いものです。
また、このような自然素材の飾りなら、どんと祭で使う火の安全性についても安心です。
さらに、どんと祭での分別作業の手間を減らせるだけでなく、子どもたちにとっては環境や伝統について学ぶ良い機会となり、大人にとっても現代の生活を見つめ直すきっかけになるでしょう。
正月飾り・材料
・稲わら、またはイネ科の草(軽く一抱え)
・麻ひもなど
・半紙、またはコピー紙など
正月飾り・作り方
1.稲わらの悪いところをよける
2.ワラを霧吹きでしめらせ、新聞などでおおって30分ほどおく
3.縄をなう(左縄)
4.わっかにしたり、縦にワラをくっつけたり、好みの形にする
5.紙垂をつくる
6.紙垂をはさむ。あとは好みの縁起物を飾る(昆布、梅の枝、ウラジロ、紙でつくった扇など)
かるく一抱えのワラから、この上の写真(50cm程の大きさのもの)が、3つくらいできます。
下の写真のような小さなものなら、ワラ6本くらいで作れますから、大量にできます。
材料費は、近所で購入したワラ代にかかった400円余りでした。
プラスチックなしの正月飾り・まとめ
現代の多くの人は、糧を大地から直接得ることがなくなり、お金で食べ物を得るのが普通になっています。
その意味では、正月飾りをお金で購入するのも自然なことです。
ついつい普段の買い物のような感覚で目で品定めしてしまいがちですが、飾りを選ぶときに「それを神様に直接返せるかどうか」を少し考えてみるのは、とても大切なことです。
神様をお迎えするには、新しく清らかなものであることが重んじられます。
一見大変そうに思えるかもしれませんが、毎年新しい自然素材で飾りを作ることができるのは、この国の自然が「豊かさと恵み」を保っている証拠でもあります。
今年の飾りが朽ちても、また新しい緑が芽吹く一年が訪れるでしょう。わたしたちは、大地から育った稲で、毎年ゼロから飾りを作り直すことができます。
今年作れたように、来年も、再来年も、きっとずっと。
この「循環する祈り」を託すのにふさわしいのは、朽ちることなく長く留まるプラスチックではなく、朽ちて自然に還る命そのものの素材です。
それこそが、火を通じて神様のもとへ返すにふさわしいものではないでしょうか。
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