仏教

線香は寝かせる?宗派による違い

横に寝かせたお線香から煙が立ち昇っている
zaruza

多くの宗派では、お線香を立てて供えます。

しかし、浄土真宗ではお線香を横に寝かせて供えるのが特徴です。

この記事では、線香を寝かせる宗派について簡単に説明します。

線香を寝かせる宗派

浄土真宗東本願寺の重厚な御影堂門
東本願寺

お線香の供え方(本数や立てる・寝かせる)は、宗派によって異なるだけでなく、寺院・地域・家庭によっても違いがあるため、一概には決められません。

同じ宗派でも、場合によっては「立てる」「寝かせる」の両方が行われることがあります。

ただし、「線香を寝かせることが基本の宗派」と言えば、やはり浄土真宗です。

浄土真宗はお線香を寝かせる

笠をかぶった親鸞聖人の銅像
親鸞聖人

浄土真宗は、親鸞聖人(しんらん しょうにん)が開いた宗派で、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えます。「南無阿弥陀仏(なむ あみだぶつ)」というのは、「阿弥陀様におまかせします」という意味です。

これは、浄土こそが、私たちが本当に頼るべき世界であるという教えに基づいています。

この浄土真宗では、お線香を半分に折って横に寝かせるのが一般的です。

線香はなぜ焚くの

まずお香をなぜ焚くかというと、香りはすばらしい供物になるからです。

昔は現在のように手軽な線香はなく、高価な香木を焚いていました。
そのため、お香は貴重な供物とされ、特別な場で仏さまに供えられるようになったのです。

この香を焚くことで、仏さまに良い香りをお供えし、感謝の気持ちを表現します。

また、お香には自分自身を清める役割もあります。
仏前で火を消すときに息を吹きかけてはいけないとされるのは、私たち生きている人間の息が、浄土の尊い方々にとっては清らかでないと考えられているからです。

だからこそ、お香を焚き、その香りで身を清め、仏さまに失礼のないようにするのです。

良い香りは浄土の清らかな世界を象徴し、心を落ち着かせる意味もあります。
すっと立ち上る煙は浄土への願い、満ちる香りは仏さまの智慧や慈悲がすべての人に分け隔てなく広がることを表しています。

焚く本数などに更なる意味をもたせる宗派もありますが、線香を焚く意味合いは、宗派に関わらずだいたい皆同じです。

なぜ線香を寝かせるのか?

それでなぜ浄土真宗がお線香を寝かせるのかというと、これは「かつて線香がまだなかった時代の名残り」という説が有力です。

昔は灰に溝を作って、粉にしたお香を幾何学模様のような折れ線状に並べ、端から火をつけて焚いていました。つまり香は、灰の上に平らにゆっくり燃焼していくものだったのです。

その名残りで、現在も浄土真宗では線香を寝かせて供えるのが作法となっているようです。


また、同じ「浄土」とつく宗派に浄土宗がありますが、これは親鸞聖人の師・法然上人(ほうねん しょうにん)が開いた宗派で、教えや作法には違いがあります。

浄土宗では、お線香は立てて供えるのが一般的です。


ほとんどの宗派は線香を立てる

日本には大きく分けて13の仏教宗派がありますが、浄土真宗を除けば、ほとんどはお線香を立てて供えます。

・日本で仏教信徒が最も多い浄土宗では、お線香は立てます。

・真言宗、曹洞宗、天台宗など、他の多くの宗派もお線香は立てます。

そのため、「線香は立てるもの」と思っている人が多いのも自然なことですね。


浄土真宗の線香の供え方

浄土真宗・東本願寺阿弥陀堂門。重厚な門が立っている。

「ずっとお線香は立てるものだと思っていた!」という方にとって、「寝かせる」供え方は戸惑うかもしれません。

特に、一般的な香炉は線香を横に倒して置くのに十分なスペースがないこともあります。

また、「線香を折る」という作法も、知らずに見るとそれでいいのだろうかと戸惑うかもしれません。

そこで、浄土真宗の一般的なお線香のあげ方を確認してみましょう。

お線香の供え方(浄土真宗の作法)

1. ご本尊様に一礼(深く頭を下げる)

2. ろうそくに火を灯す

3. お線香を1本取り、長いようなら香炉の大きさに合わせて2つか3つに折る

4. 折った全てのお線香に火をつけ、炎は口で吹き消さず手であおいで鎮める

5. 火がついた方を左にして、香炉の灰の上に横に寝かせる(寝線香)

6. おりんを鳴らす(鳴らさない場合もあり)

7. 合掌し、「南無阿弥陀仏」(なまんだぶ・なまんだぶつ)と唱える(心の中でもよい)

8. おりんを鳴らす(鳴らさない場合もあり)

9. 蝋燭の火を消す

10. ご本尊様に一礼(深く頭を下げる)

おりんを鳴らす回数や、線香をいくつ取り、幾つに折るかは、寺院や家庭によって異なります。おりんは鳴らさないこともあります。

浄土真宗はあまり厳格な戒律を求めない宗派で、ここにご紹介した方法が絶対ではありません。

線香を寝かせると途中で消えやすいですから、わら灰を使用します。
また、燃え残りなどは毎回取り除き、灰をよく均しておくことも消えにくくするコツです。


まとめ:線香は寝かせる?宗派による違い

東本願寺、渉成園の池と橋
浄土真宗東本願寺・渉成園

多くの宗派はお線香を立てますが、浄土真宗では寝かせてお供えします。

名前が似ていても、浄土宗ではお線香は立ててお供えします。

いろいろな作法があることを知っておくだけでも、お寺や法要での対応に慌てなくて済みますね。

参考資料

真宗大谷派(東本願寺)公式サイト

e-Stat,文化庁宗務課,宗教統計調査,包括宗教団体別被包括宗教団体・教師・信者数,2024年度

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今朝、雷で目が覚めました
神社やお寺、教会などを軸に、祈りについて学びながら心の平穏を探します。このブログをきっかけに、世の中の事物にも目を向けられたらと思います。晴れた一日になりますように。
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