祈りの旅

寒川神社で人生が変わる:八方除(はっぽうよけ)と豊かな歴史の物語

寒川神社の神門
zaruza

「相模の国の一の宮、八方除の寒川神社」

人生に迷ったとき、何かを変えたいと思ったとき、そっと背中を押してくれる場所があるといいですよね。寒川神社は、そんな神社です。

困難や災厄から守ってくれる「八方除」で知られるこの神社には、毎日多くの人が訪れます。特に初詣は大賑わい!一歩踏み出すきっかけを探しに、あなたも訪れてみませんか?

この記事では、寒川神社の魅力や歴史、八方除のひみつを詳しくご紹介します。

相模の国の一の宮とは

青空の下、寒川神社の本殿を正面から望む。左手には二本のご神木が見える。
寒川神社 本殿

「相模の国の一の宮、八方除の寒川神社」この「一の宮」とは、その国(律令制の地方行政区分)の中で最も格式が高く重要とされる神社のことです。

一宮に次ぐ格式の神社は「二宮」、その次は「三宮」と続けるのが一般的で、この体系は奈良・平安時代に成立し、後に地域の信仰を象徴するものとして発展しました。

国府(地方行政の中心地)に近い場所に一宮が位置づけられることが多いですが、必ずしも国府の近くにあるとは限りません。

古くから信仰されている神社や、その地域を象徴する神がまつられている、または交通の要所にある神社、その時代の権力者に支持された神社などが選ばれているようです。

「相模の国の一の宮」とされる寒川神社は、相模の国でもっとも格式が高いとされますが、つぎにその理由について考えてみましょう。

相模川とのつながり

青空の下、豊かな水をたたえる相模川
相模川

寒川神社を考えるとき、相模川(さがみがわ)の存在を忘れることはできません。

相模川は、相模の国(今の神奈川県中南部)で一番大きな川で、昔から人々の暮らしを支えてきました。その源は山梨県にあり、相模平野を流れて相模湾に注ぎます。豊かな水の流れは、肥えた土地をつくり、人々の生活や農業を支えてきました。

寒川町には、縄文時代の日本最大級の遺跡である岡田遺跡があります。
あたりは程よい台地も点在していて、この遺跡は相模川の恵みと、当時今より近くにあった海からの恵みを受け、古くから人が住みやすい土地であったことを示しています。

肥えた土、住みよい地形、相模川流域は田んぼ作りが盛んで、農業地帯として発展しました。

またこの川は古代から中世にかけて人や物を運ぶ道としても使われ、人びとはこの川を使って、内陸から木材や鉱石、農産物などをはこび出し、海からは塩や魚介、輸入品などを運び入れていました。

相模川は地域の発展に欠かせない存在だったのです。

こうした相模川の存在は、そばに鎮座する寒川神社が一宮として大切にされてきた理由のひとつです。

川がもたらす恵みと、そこに暮らす人々の祈りを受け止めてきたのが寒川神社なのです。

寒川神社とほかの神社の違い

寒川神社のご本殿を近くから仰ぐ。
御本殿

神奈川(相模の国)には、他にも格式高い神社が数多くあります。

たとえば、箱根神社は霊峰・箱根山を御神体とし、山岳信仰と深い関わりを持つ神社です。

奈良時代に創建され、箱根の関所や東海道の交通の要所にあることから、多くの旅人や武士たちに信仰されてきました。
現在も「勝負運」「交通安全」の神社として全国的に有名で、箱根の自然と一体となったその美しい風景も訪れる人々を魅了します。

また、大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)は、古代から農業や雨乞いの神として人々の祈りを受けとめてきました。大山そのものが信仰の対象となっており、とくに江戸時代には「大山詣り」が庶民の間で大流行しました。
標高約700メートルに位置する下社(しもしゃ)からは相模湾を一望でき、その景色とともに心身を清める霊場としての役わりを果たしています。

これらの神社はいずれも、相模の国における重要な役割を担ってきましたが、それぞれ特定の地域や山岳信仰に基づく影響力を持つ神社と言えます。

一方で、寒川神社は相模川流域を中心とした広範囲にわたる影響力を持ち、地域全体の繁栄や守護を祈る存在として、相模の国全体を象徴する神社でした。

その立地も、山岳ではなく広大な平野の中央に位置し、国府(現在の大磯町)にも近く、人々の生活や物流を支える相模川の守り神としても重要視されてきました。

こうした広域的で包容力のある役割を担っていたことから、寒川神社が相模の国の一宮としてふさわしい存在であったと言えるでしょう。

寒川神社のご利益:八方除とは

寒川神社にある渾天儀
寒川神社の渾天儀

日本では、古代から方位に霊的な力があると信じられていました。

特定の方位が災いをもたらすと考えられ、それを鎮めるための儀式が行われることもありました。

6~7世紀に中国から陰陽道が伝わると、方位や暦の吉凶を占う技術が導入されました。
陰陽五行という考え方が取り入れられ、吉凶の判断が体系化されますが、この頃はまだ専門の陰陽師が扱い、皇室や貴族に限られたものでした。

やがて鎌倉時代以降になると、武士たちも方位信仰を重視するようになります。

凶方への出陣が避けられないときには、神社で方位除けの祈祷を受け、安全を願いました。

寒川神社は鎌倉幕府に近い場所にあるので、武士たちの篤い信仰を受けていました。

江戸時代になると、方位信仰は庶民にも広がり、引っ越しや新築、結婚など日常生活の中で吉方を意識するようになります。

この頃、「八方除」という形式が広まりました。これはすべての方位をまとめて祓う形で、専門家に頼る必要を減らした便利な祈祷として、庶民にも広く受け入れられました。

また、寒川神社ウェブサイト※1には[寒川神社は江戸(東京)から見て南西(坤)の地に鎮座しており、江戸(現在の皇居)の裏鬼門にあたります。また、通常社殿は南向き、もしくは東向きに建てられるのですが、寒川神社は南西を向いています。そのため、古来より関八州の守護神として、また江戸の裏鬼門をお護りする神社として崇敬され、とりわけ八方除・方位除の神様として信仰されてきました。]とあり、神社の位置そのものにも方位除けの意味があるようです。

寒川神社は、鎌倉からも江戸からも来やすい場所にあり、鎌倉幕府やその後の江戸時代を通じて重要視される中で、「八方除」の神社としてその地位を確立していきました。

寒川神社の概要:八方除の神さま

主祭神:
寒川神社では、寒川大明神として奉称される二柱(ふたはしら)の神々を中心におまつりしています。

  • 寒川比古命(さむかわひこのみこと)
    男性神として信仰され、地域全体の守護や八方除けを司る神です。
  • 寒川比女命(さむかわひめのみこと)
    女性神として信仰され、家庭円満や生命の象徴として親しまれています。

寒川比古命と寒川比女命は、陰陽のバランスを象徴する神々としても知られています。特に「八方除け」の信仰では、この二柱が災厄を除き、平穏と繁栄をもたらす存在とされています。寒川神社はこの二柱の総本社であり、全国的にも珍しい神々を祀る神社です。

下総の国(千葉)にも同じ寒川比古命、寒川比女命をおまつりする「寒川神社(神明社・伊勢明神)」がありますが、そちらでは八方除は特にうたわれず、水神さまとして敬われています。

寒川という名称が清らかな水を連想させるように、相模の国「寒川神社」ご祭神も「水」と「土地」を守る神としての性格を持つとされています。境内には「難波の小池」と呼ばれる起源に関わる地も残されています。

本殿とご神木:
本殿は流造で、1976年に建て替えられました。内陣には「八方除けの守護神」を象徴する神鏡が安置されています。また、ご本殿の横に二本の杉のご神木が立ち、参拝者を見守っています。

寒川神社の二本の杉のご神木。寄り添うように立っている。
ご神木

末社:
宮山神社、御祖神社

寒川神社の末社、宮山神社
末社 宮山神社

歴史:
寒川神社は1600年の歴史を持つと言われていますが、周辺地域には縄文時代から人々が暮らしていた痕跡があり、信仰の起源はそれ以上に遡る可能性もあります。

参拝・ご祈祷

寒川神社にお参りする際は、まず手水舎(ちょうずや)で心と体を清めましょう。その後、本殿正面で神さまに感謝と願いをお伝えします。

もし神職によるご祈祷を希望される場合は、本殿に向かって右手にある客殿(きゃくでん)で申し込みを行います。ご祈祷料は3,000円からで、内容については相談することもできますので、気軽にお話ししてみてください。

さらに、ご祈祷を受けると特別な体験ができます。
神嶽山神苑(かんたけやま しんえん)という美しい庭園を拝観できるのです。こちらは通常非公開のため、ご祈祷を受けた方だけの特典です。

ご祈祷や庭園の拝観については、受付時間や開苑期間が定められています。

詳しくは、神社のご案内をご確認ください。

アクセス

寒川神社へはJR相模線「宮山」駅から徒歩9分

所在地は 〒253-0915 神奈川県高座郡寒川町宮山3916

近隣を走る小田急線や東海道本線の発展により、現代の寒川町自体は独自の経済的中心地というよりも、主要駅の近郊としてのゆったりとした印象があります。

相模線の電車は、ドアの開閉を乗客自身が手動で行います。

都会の喧騒を離れ、相模川に沿うように走る相模線に揺られれば疲れも癒されていくでしょう。

お土産

小豆餡でくるまれた八角形のお餅
八福餅

寒川神社参拝のお土産には八福餅がおすすめです。八方除にちなんだ八角形の形をしています。

寒川神社の八方除で人生が変わる

寒川の地には、縄文時代から多くの人々が暮らしていました。

この地域を潤し、豊かな自然と安全な生活の場をもたらしてきたのが相模川です。その流域に鎮座する寒川神社は、長い歴史を持ち、人々の祈りを受け止めてきた存在です。

寒川神社は、「八方除」の神社としても知られます。もともと貴族や特定の階級だけが利用していた方位除けを、庶民にも広める役割を果たしました。
現在では初詣には何十万人もの参拝客が訪れ、平日でも多くの人が祈願に訪れる、全国的にも人気の高い神社となっています。

「相模で一番の神社が、あらゆる災厄や災難から守ってくれる」

そんな安心感を与えてくれるのが寒川神社です。
八方除けの神として、訪れる人々の心を静かに支え、人生を前向きに導いてくれます。

もし何かを変えたいと感じたり、迷いがある時には、ぜひ相模の国の一の宮・寒川神社へ足を運んでみてください。

きっと行き詰まった道が開かれ、新しい流れが生まれるはずです。

参考資料・サイト

※1 寒川神社公式サイト

おすすめ記事

初穂料に見る感謝の心

※当ブログは、管理人が自身の調査と個人的な思考を交えて書いております。記事の内容に誤りや不適切な表現が含まれている場合もございますが、その際はご容赦いただけますと幸いです。当ブログはあらゆる信仰や生き方を尊重し、すべての方の心に寄り添うことを大切にしています。どなたも軽んじたり排除したりする意図はありません。

ABOUT ME
ザルザ
ザルザ
今朝、雷で目が覚めました
神社やお寺、教会などを軸に、祈りについて学びながら心の平穏を探します。このブログをきっかけに、世の中の事物にも目を向けられたらと思います。晴れた一日になりますように。
記事URLをコピーしました